アルファベットだけを見ると、検査名や制度名のようにも思えますよね。わたしもCPTSDという言葉を初めて調べたとき、PTSDに付いた「C」が何を変えるのかで一度止まりました。
こんにちは、「ゴイノワ」のナギです。CPTSDは心の傷に関係する言葉ですが、単に「PTSDが重くなったもの」と受け取ると、本来の意味から少し離れてしまいます。
この記事では、CPTSDの意味や主な特徴、PTSDとの違いを簡単に紹介します。ネットで言葉を見かけたとき、どこまで受け取ればよいのかも一緒にほどいていきます。
CPTSDとは何を指す言葉?
CPTSDとは「Complex Post-Traumatic Stress Disorder」の略です。日本語では「複雑性PTSD」や「複雑性心的外傷後ストレス障害」と呼ばれています。
- C
-
Complexの頭文字で、日本語では複雑性と訳されます
- PTSD
-
心的外傷後ストレス障害を表す略称です
- 日本語での呼び方
-
複雑性PTSDという表記が広く使われています
世界保健機関が公表するICD-11では、CPTSDはPTSDとは別の診断名として示されています。PTSDに共通する反応だけでなく、感情や自己認識、人間関係の難しさも含むのが特徴です。
CPTSDはPTSDの特徴に三つの持続的な難しさが加わる状態と考えると、最初の意味をつかみやすくなります。
「複雑性」は重症という意味?
「複雑性」という文字を見ると、症状がとても重い人や、問題がいくつも重なった人だけを指すように感じるかもしれません。けれど、重さだけでPTSDと区別する言葉ではありません。
CPTSDの「複雑性」は、つらい記憶への反応に加えて、自分への感じ方や他者との関係など、生活の広い部分に影響が及んでいることを表しています。
そのため、「PTSDより必ず重い」「症状が多ければCPTSD」とは言い切れません。ここは名前の印象だけで決めたくないところなんですよね。
どのような体験と関係する?
CPTSDは、非常に恐ろしい体験や苦痛を伴う出来事のあとに生じることがあります。とくに、逃げることが難しい状況が長く続いた場合と関係しやすいとされています。
例として挙げられるのは、長期にわたる虐待やネグレクト、家庭内暴力、拘束、搾取、拷問、繰り返される暴力などです。身近な相手から被害を受けた場合も含まれます。
ナギ本人の弱さを表す言葉ではありません
ただし、同じような体験をした人が、全員CPTSDになるわけではありません。体験の種類や長さだけを見て、自分や誰かに診断名を当てはめることはできないのです。
CPTSDに見られる六つの特徴
ICD-11によるCPTSDの特徴は、大きく六つのまとまりで考えられます。前半の三つはPTSDと共通し、後半の三つがCPTSDを理解するうえでの手がかりになります。
| 特徴 | 表れ方の例 |
|---|---|
| 再体験 | 出来事が今起きているように鮮明によみがえる |
| 回避 | 記憶につながる場所や会話を避けようとする |
| 現在の脅威 | 危険が続いているように警戒し、驚きやすくなる |
| 感情調節の難しさ | 気持ちが激しく動く、または感情を感じにくくなる |
| 否定的な自己認識 | 自分には価値がない、劣っていると感じやすくなる |
| 対人関係の難しさ | 人を信じることや親しい関係を続けることが難しくなる |
症状の表れ方は一人ひとり異なります。たとえば感情が急にあふれる人もいれば、反対に何も感じないような状態になる人もいて、同じ形になるとは限りません。
また、一部の特徴に心当たりがあっても、それだけでCPTSDとは判断できません。どのくらい続いているか、暮らしにどんな影響があるかまで専門家が確認します。
再体験や回避はどう表れる?
再体験とは、過去の出来事を単に思い出すことではありません。その場面が今まさに起きているように感じたり、鮮明な映像や悪夢として現れたりする反応を指します。
音やにおい、場所、会話、相手の表情などがきっかけになる場合もあります。本人には理由がすぐ分からず、突然体がこわばったり、動悸や発汗が起きたりすることもあります。
回避は、関連する場所へ行かないといった行動だけではありません。思い出さないよう忙しく過ごす、気持ちを切り離す、話題を避けるといった形で現れることもあります。
感情や自己認識への影響
CPTSDでは、感情の動きを自分で扱うことが難しくなる場合があります。小さな出来事でも怒りや悲しみが強く出たり、しばらく元の状態へ戻れなかったりします。
一方で、感情が鈍くなり、楽しいはずのことにも反応できない人もいます。「何も感じないから平気」とは限らず、それも心が身を守ろうとする反応の一つです。
自分に対して「価値がない」「すべて自分が悪い」と感じ続けることもあります。けれど、強い罪悪感や恥ずかしさがあることと、実際に本人へ責任があることは別です。
人間関係で起こりやすいこと
長い期間、人から傷つけられる体験が続くと、誰かを信じること自体が怖くなる場合があります。親しくなりたい気持ちがあっても、距離が近づくほど不安になることもあるでしょう。
相手の何気ない言葉を危険の合図のように感じたり、見捨てられる前に関係を切ったりすることもあります。反応だけを見ると理解されにくく、本人も理由を説明できない場合があります。
これは単に「人付き合いが苦手」という話ではありません。以前は必要だった警戒が、安全な場所に移ったあとも続き、人との関係に影響している可能性があります。
PTSDとはどこが違う?
PTSDとCPTSDは、どちらも心的外傷となる体験に関係する状態です。出来事の再体験、関連するものの回避、今も危険があるように感じる反応は共通しています。
| 名称 | 特徴の捉え方 |
|---|---|
| PTSD | 再体験、回避、現在の脅威という三つのまとまりが中心 |
| CPTSD | PTSDの特徴に加え、感情、自己認識、対人関係にも難しさが続く |
CPTSDでは、PTSDと共通する特徴に加え、感情調節の難しさ、否定的な自己認識、対人関係の難しさが見られます。違いは症状の強さだけではなく、組み合わせにあります。
PTSDとCPTSDはICD-11では別の診断名です。一方だけが軽く、もう一方だけが重いという単純な上下関係ではありません。
長期間の体験だけで決まらない
CPTSDは長期間にわたる体験と関係しやすいため、「一度の出来事ならPTSD、何度も続けばCPTSD」と説明されることがあります。分かりやすい一方で、正確とは言い切れません。
現在のICD-11では、体験の回数だけで診断名を分けるのではなく、本人にどのような特徴が表れ、生活へどの程度の影響が出ているかを見ます。
長い体験があってもCPTSDの診断要件に当てはまらない人はいます。反対に、一つの出来事として説明しにくい体験が複数重なり、CPTSDの特徴が見られる場合もあります。
診断分類によって扱いが違う
CPTSDについて調べると、「正式な病名ではない」という説明と、「診断名として存在する」という説明の両方を見かけることがあります。ここで戸惑う人は多いと思います。
世界保健機関によるICD-11には、CPTSDが独立した診断名として掲載されています。一方、米国精神医学会によるDSM-5では、CPTSDという別の診断名は設けられていません。
つまり、どちらか一方の説明が必ず間違っているわけではなく、参照している診断分類が異なるのです。記事や医療機関の説明を読むときは、何を基準にしているかも見てください。
似た症状があっても自己判断しない
SNSや動画では、CPTSDの特徴をまとめた投稿が多く見つかります。自分の体験に重なる説明を読むと、「これで全部説明できるかもしれない」と感じることもあるでしょう。
その感覚を無理に否定する必要はありません。ただ、感情の揺れや自己否定、人間関係の難しさは、ほかの心身の状態でも起こることがあります。
診断では、現在の症状だけでなく、体験との関係、続いている期間、生活への影響なども確認されます。チェック項目の数だけで結論を出さないほうが、今の困りごとを伝えやすくなります。
つらさを相談する三つのステップ
医療機関などへ相談するとき、最初から「CPTSDかどうか」をうまく説明する必要はありません。診断名よりも、今どのようなことに困っているかが話の入口になります。
- ステップ1
-
困っている反応や場面を短く書き出します
- ステップ2
-
始まった時期や頻度、続く時間を確認します
- ステップ3
-
生活への影響を専門家へそのまま伝えます
たとえば、悪夢で眠れない、人が近づくと体がこわばる、感情が急にあふれる、仕事や家事に集中できないなど、具体的な場面を書いておくと伝えやすくなります。
過去の出来事を詳しく話すことが難しければ、最初からすべて説明しなくても構いません。「今は詳細を話しにくい」と伝えることも、相談に必要な情報の一つです。
CPTSDの治療はどう進む?
CPTSDへの支援は、本人の状態や生活環境に合わせて検討されます。PTSDにも用いられる心理療法として、トラウマに焦点を当てた認知行動療法やEMDRなどがあります。
ただし、つらい記憶をいきなり詳しく話すことだけが治療ではありません。感情を扱う方法を身につけたり、現在の安全を確かめたりする段階を設ける場合もあります。
治療方法や順番は一律ではなく、症状や体調、本人が話せる範囲によって変わります。自分に合わないと感じたときは、そのことを担当者へ伝えてよいのです。
周囲はどう接すればいい?
身近な人がCPTSDについて話してくれたときは、出来事の詳細を聞き出そうとせず、本人が話せる速さに合わせます。「早く忘れたほうがいい」と急かす言葉も避けたいところです。
反応の理由が分からなくても、まずは本人が何を望んでいるかを聞けます。そばにいてほしいのか、一人になりたいのか、専門家を探す手伝いが必要なのかは人によって異なります。
突然触れられることや大きな音に強く反応する人もいます。抱きしめる、肩をたたくといった行動も、先に本人の希望を確かめてからにすると負担を減らせます。
言葉より今の困りごとを見る
CPTSDとは、複雑性心的外傷後ストレス障害を表す言葉です。PTSDと共通する反応に加え、感情調節、自己認識、対人関係に持続的な難しさが見られます。
「複雑性」は単に症状が重いという意味ではありません。また、ICD-11とDSM-5では診断名の扱いが異なるため、説明を読む際は参照している基準にも目を向けてください。
心当たりがあるときは、まず最近困った場面を一つだけメモしてみましょう。診断名を先に決めるより、そのメモを専門家へ見せるほうが、今必要な支援を話し合う一歩になります。










