CDSとは?信用リスクを売買する仕組みをわかりやすく解説

経済ニュースにアルファベット三文字が出てくると、急に話が遠く感じることがあります。CDSも、読み方だけ分かっても中身が浮かびにくい言葉の一つです。

こんにちは、「ゴイノワ」のナギです。わたしも初めて調べたときは、「倒産保険のようなもの」という説明だけでは、誰が誰を守るのか分かりませんでした。

この記事では、CDSの意味から取引の流れ、ニュースに出てくる数字の読み方まで扱います。難しい計算よりも、まず仕組みの芯をつかんでいきましょう。

目次

CDSとは信用リスクを扱う取引

CDSは「Credit Default Swap」の略で、クレジット・デフォルト・スワップと読みます。企業や国などが借りたお金を返せなくなる危険を対象にした金融派生商品です。

金融派生商品と聞くと身構えてしまいますが、入口はそれほど複雑ではありません。お金が返ってこない事態に備え、その危険を別の相手に引き受けてもらう契約です。

Credit

貸したお金を返してもらえるという信用

Default

決められた返済ができない債務不履行

Swap

契約に基づいてお金の流れを交換する取引

三つの単語をつなげると、信用上の問題に備えて支払いを交換する取引、という姿が見えてきます。CDSで移されるのは債券そのものではなく信用リスクです。

倒産保険に似ているといわれる理由

CDSは、よく「企業や国の倒産に備える保険のようなもの」と説明されます。一定の料金を払い、問題が起きた場合に支払いを受ける形が保険と似ているからです。

たとえば火災保険では、契約者が保険料を払い、対象となる火災が起きたときに補償を受けます。CDSでも、買い手が定期的に料金を払い、決められた問題に備えます。

ただし、一般的な保険とまったく同じではありません。CDSは金融市場で取引される契約であり、必ずしも損失を受ける債券の持ち主だけが買うとは限らないんですよね。

買い手と売り手の関係を例で見る

ここでは、ある銀行が企業Aの社債を持っている場面を考えます。社債は、企業が投資家からお金を借りるために発行する証券です。

銀行は企業Aから利息を受け取れますが、企業Aの経営が悪化すれば、元本や利息が戻らないかもしれません。そこで、別の金融機関からCDSを買います。

ナギ

危険だけを別の相手へ移すイメージです

CDSを買った銀行は、売り手へ定期的に料金を払います。企業Aに契約上の問題が起きると、売り手は決められた方法で買い手の損失を補う流れです。

CDS取引に登場する三つの立場

CDSを理解するときは、登場する三者を分けて考えるとつかみやすくなります。買い手と売り手だけでなく、信用状態を見られる企業や国がいるからです。

立場役割
プロテクションの買い手料金を払い、信用リスクを引き受けてもらう
プロテクションの売り手料金を受け取り、問題発生時の支払いを負う
参照組織信用リスクの対象となる企業や国など

意外なのは、参照組織がCDS契約の当事者とは限らない点です。先ほどの例なら、企業Aとは別の場所で、銀行と金融機関が企業Aの信用リスクを取引しています。

わたしはここで一度止まりました。CDSは企業Aが申し込む保険ではなく、企業Aへお金を貸した側などが、別の相手と結ぶ契約だったからです。

料金を払う側が買い手になる

CDSでは、信用リスクから守ってもらう側を「プロテクションの買い手」と呼びます。買い手は契約期間中、売り手へプレミアムや固定クーポンと呼ばれる料金を払います。

一方の売り手は料金を受け取る代わりに、参照組織で問題が起きた場合の支払いを引き受けます。何も起きなければ、基本的には料金を受け取ったまま契約が終わります。

ここは言葉が少し紛らわしいところです。買い手が買うのは債券ではなく、損失から守ってもらう権利。売り手は信用リスクを引き受ける立場になります。

支払いが起きるクレジットイベント

参照組織の経営が少し悪くなっただけで、CDSの売り手からすぐにお金が支払われるわけではありません。契約で定められた信用上の出来事が必要です。

その出来事を「クレジットイベント」と呼びます。代表的なものには、破産、債務不履行、債権者に不利な形での債務条件の変更などがあります。

破産

事業を続けながら返済することが難しくなる状態

支払不履行

元本や利息が決められた期日に支払われないこと

債務条件の変更

返済額や期限などが債権者に不利に変わること

業績が悪化しただけでは支払いが始まるとは限りません。どの出来事を対象にするかは契約で決まり、実際に該当したかどうかも確認されます。

クレジットイベント後の決済

クレジットイベントが認められると、買い手と売り手の間で決済が行われます。大まかには、損失にあたる金額を売り手が負担する仕組みです。

決済方法には、対象となる債券を引き渡して額面相当額を受け取る方法や、債券の価値が下がった分を現金で受け取る方法などがあります。

実際の市場では、オークションで回収できる価値を示す最終価格が決められ、その結果を用いて決済額を計算する場合があります。単に元本全額が渡されるとは限りません。

CDSスプレッドの数字が表すもの

ニュースでは「CDSスプレッドが上昇した」という表現を見かけます。これは、信用リスクを引き受けてもらうために買い手が払う料金の水準が上がったという意味です。

引き受ける危険が大きいと考えられるほど、売り手は高い料金を求めます。そのため、一般にはCDSスプレッドの上昇が信用不安の強まりを示す材料になります。

反対に、数字が下がれば信用不安が後退したと受け取られることがあります。ただし、数字だけで企業や国の将来が決まったと考えるのは早すぎます。

数字が高いと必ず倒産するの?

CDSスプレッドが高いからといって、その企業や国が必ず倒産するわけではありません。市場参加者が感じている不安が、料金に反映されていると考えるほうが自然です。

実際の数字には、信用状態だけでなく、CDSを売買したい人の多さや取引のしやすさも影響します。市場が落ち着かない時期には、幅広い銘柄で数字が動くこともあります。

不安を映す材料ではありますが、倒産を予言する数字ではありません。株価、債券価格、決算、財政状態などと合わせて読まれる指標の一つです。

保険との違いはどこにある?

保険では通常、自分が持つ建物や自動車など、損害を受ける可能性のある対象へ契約を結びます。CDSでは、対象債券を保有していない人が取引する場合もあります。

たとえば、ある企業の信用状態が悪くなると予想した参加者が、その企業の債券を持たずにCDSの買い手になることがあります。反対に、改善を見込んで売り手になる場合もあります。

つまりCDSは、損失を避けるためだけの契約ではありません。信用状態の変化を予想した取引にも使われるため、日常の保険より金融商品としての性格が強くなります。

CDSが使われる二つの目的

CDSの使い方は、大きく分けると信用リスクへの備えと、信用状態の変化を見込んだ取引です。同じ契約でも、参加する目的によって受け取り方が変わります。

使い方考え方
信用リスクへの備え保有する債券などで損失が出る事態に備える
信用状態を予想した取引企業や国の信用が悪化または改善すると見込む

債券の持ち主がCDSを買う場合は、事故に備える保険に近い使い方です。一方、債券を持たずに買う場合は、信用状態が悪くなるとの予想が強く表れます。

ここを同じものとして読むと、CDSの話が分かりにくくなります。わたしなら、誰が何の目的で契約するのかを先に見て、備えなのか予想なのかを考えます。

CDS指数との違いも知っておく

個別の企業や国を対象とするCDSとは別に、複数の企業のCDSをまとめた「CDS指数」もあります。一社ではなく、市場全体の信用不安を見たいときに使われます。

たとえば、複数の企業を対象にした指数が大きく上がれば、特定企業だけでなく、企業の信用全体に不安が広がっている可能性があります。

ニュースでCDSという語を見たときは、個別の国や企業の数字なのか、複数をまとめた指数なのかも確かめたいところ。似た表記でも、話している範囲が違います。

ニュースでCDSを読む三つの手順

専門家のように細かな計算まで追わなくても、ニュースの意味をつかむことはできます。まずは対象、数字の方向、背景の三つを順に見る方法が分かりやすいです。

ステップ1 対象を見る

どの国や企業の信用リスクなのかを確かめます

ステップ2 方向を見る

数字が上昇したのか低下したのかを見ます

ステップ3 背景を見る

決算や財政、ニュースとの関係を確かめます

「CDSが上がった」という一文だけでは、まだ情報が足りません。どの期間で、どの程度動いたのかまで分かると、変化の大きさを受け取りやすくなります。

前日から少し上がったのか、数週間で急に上がったのかでは意味合いが違います。記事内に比較対象があれば、数字を単独で見ずに前後を比べてみてください。

日常生活でCDSを使うことはある?

一般の人が、銀行窓口や証券会社の通常の商品としてCDSを直接売買する場面は多くありません。取引の中心は、銀行や証券会社などの金融機関です。

それでも意味を知っておくと、海外情勢、企業の経営不安、国の財政問題に関するニュースを読みやすくなります。身近な金融商品というより、ニュースを読むための言葉です。

とくに「ある国のCDSが急上昇した」という記事では、その国への返済不安が市場で強まっている可能性を読み取れます。数字の上昇を良い知らせと受け取らずに済みます。

別の意味のCDSには注意する

CDSという略称は、金融以外の分野でも使われます。会社名、情報システム、医療や科学の用語など、文脈によって異なる言葉を指す場合があります。

検索結果に金融と関係のない説明が出てきたら、前後の言葉を見てみてください。「スプレッド」「信用リスク」「債務不履行」があれば、金融のCDSと考えられます。

略称だけで意味を決めないことが、取り違えを防ぐ近道です。どこで見かけた言葉なのかを一緒に確認すると、該当する意味へたどり着きやすくなります。

CDSは信用への不安を映す契約

CDSとは、企業や国などが債務を返せなくなる信用リスクを扱う金融派生商品です。買い手は料金を払い、売り手はクレジットイベント発生時の支払いを引き受けます。

倒産保険に似ていますが、債券を持たない参加者も取引できる点などが一般的な保険とは異なります。CDSスプレッドの上昇は、信用不安が強まったことを示す材料の一つです。

次にニュースでCDSを見かけたら、まず対象となる国や企業を確認し、数字が上がったのか下がったのかを見てください。その二つだけでも、記事の意味をかなり追いやすくなります。

情報は更新時点のものです。最新情報は公式サイトもあわせてご確認ください。

この記事を書いた人

「ゴイノワ」ナギ

『くらしごと』では、暮らしの中で気になることや、動く前にちょっと確認しておきたいことをわかりやすくまとめています。

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