化学の教科書で反応式を見て、「急に六角形ができたけど、何が起きたの?」と手が止まることがあります。diels-alder反応も、最初は図の変化が大きく見える反応です。
こんにちは、『ゴイノワ』のナギです。わたしもこの反応を追っていて、まず「4+2」の数字が何を表すのかで一度止まりました。
ただ、登場する2つの物質と、新しくできる結合に注目すると話はかなりシンプル。まずは反応の骨組みからつかんでみます。
diels-alder反応とは
diels-alder反応は、共役ジエンとジエノフィルが反応して、主に六員環を作る有機化学の反応です。日本語では「ディールス・アルダー反応」と読みます。
2つの成分から新しい六員環を一度に作れる反応と考えると、最初の入口としてはわかりやすいでしょう。
1928年にドイツの化学者オットー・ディールスとクルト・アルダーが報告した反応で、2人はこの研究により1950年のノーベル化学賞を受賞しています。
反応するのは2つの成分
この反応には、大きく分けて「ジエン」と「ジエノフィル」という2つの役割があります。名前だけだと少し身構えてしまいますよね。
- ジエン
-
共役した2つの二重結合をもつ側です。
- ジエノフィル
-
ジエンと反応する二重結合や三重結合をもつ側です。
たとえば1,3-ブタジエンはジエン、エチレンはジエノフィルになれます。この2つが反応すると、新しい六員環であるシクロヘキセンができます。
「4+2」は何を表す?
diels-alder反応を調べると、かなりの確率で「[4+2]環化付加」という表記に出会います。ここは難しい記号に見えますが、数えているものがわかれば怖くありません。
ジエン側から4個、ジエノフィル側から2個の原子が新しい環づくりに参加します。合わせて6個なので、六員環ができるわけです。
わたしなら、最初から電子の細かな動きを全部覚えるより、「4と2が集まって6」を先に頭へ入れます。そのほうが反応式を追いやすいんですよね。
ナギまずは「4+2で六員環」で十分!
結合は一度に変化する
diels-alder反応には、途中で安定した中間体を一つずつ作るのではなく、一つの段階で結合の変化が進むという特徴があります。
反応すると、新しい炭素―炭素結合が2本でき、ジエンにあった二重結合の配置も変わります。この一連の変化が協奏的に進む反応です。
矢印を一本ずつ別々の出来事として見ると、かえって混乱しやすいところ。複数の電子の移動が同時に起こる、と捉えたほうが反応の性格に近くなります。
どんなジエンでも反応する?
ここでもう一つ引っかかりやすいのが、「二重結合が2つあれば全部ジエンとして使えるのか」という点です。実際には、そう単純ではありません。
diels-alder反応では、共役ジエンが反応に適したs-cisと呼ばれる形を取れることがポイントになります。両端の炭素が近づける形だからです。
s-transの形のままでは、反応する両端が離れすぎています。構造上s-cisになれないジエンは、diels-alder反応を起こしにくい、または起こせません。
ジエノフィルにも反応しやすさがある
もう一方のジエノフィルも、何を選んでも同じ速さで反応するわけではありません。ここまで来ると、反応式の横にいろいろな置換基が描かれる理由も見えてきます。
一般に、電子求引性基をもつアルケンはジエノフィルとして反応しやすくなります。無水マレイン酸やアクリロニトリルなどが代表的な例です。
一方、単純なエチレンでも反応自体は考えられますが、反応性は高くありません。「二重結合があれば全部同じ」ではないところは覚えておきたい部分です。
立体配置も引き継がれる
diels-alder反応を少し深く学ぶと、「cis」「trans」といった立体化学も出てきます。ここで急に難度が上がったように感じる人もいるかもしれません。
注目したいのは、ジエノフィルがもともと持っていた相対的な立体配置が、生成物にも反映されることです。cisの関係はcis、transの関係はtransとして残ります。
反応が一つの段階で進む性質と結びつけて考えると、この特徴もつかみやすくなります。置換基の位置を追う問題では、反応前の配置を先に見るのが近道です。
endoとexoとは?
環状のジエンなどを使う例では、「endo生成物」「exo生成物」という言葉も登場します。わたしもここは名前だけで覚えようとせず、何を比べているのかから見ました。
これは、二環性の生成物などで置換基がどちら側を向くかを区別する表現です。典型的なdiels-alder反応では、endo側が優先して生じる場合があります。
ただし、すべてのdiels-alder反応を「必ずendoになる」と覚えるのは雑です。反応物の構造によっては、endoとexoを別の生成物として区別できない例もあります。
逆向きの反応もある
環を作る方向だけ知っていると意外ですが、diels-alder反応には逆向きもあります。「retro Diels-Alder反応」と呼ばれる反応です。
こちらは六員環を含む化合物が分かれて、ジエンとジエノフィルに相当する成分へ戻る反応。加熱などによって起こる場合があります。
つまりdiels-alder反応は、「2つをくっつけて環を作る」という一方向だけの話ではありません。逆方向があると知っておくと、反応全体の関係が見つけやすくなります。
なぜ有機化学でよく出る?
ここまで特徴を追うと、この反応が有機化学で繰り返し登場する理由もわかってきます。一度の反応で、新しい環と2本の炭素―炭素結合を作れるからです。
しかも、置換基の位置や立体配置をある程度予測しながら複雑な分子を作れます。そのため、有機合成では使い道の広い反応として扱われています。
名前を暗記するだけだと少し味気ない反応ですが、「一度に骨格を大きく作れる」と考えると、化学者にとって便利な理由がかなり実感しやすくなります。
まずは4+2から覚えておこう
diels-alder反応は、共役ジエンとジエノフィルから六員環を作る[4+2]環化付加反応です。新しい2本の結合が一つの段階で生まれるのも大きな特徴です。
さらに学ぶなら、s-cis、ジエノフィルの反応性、立体化学、endo・exoへ進むと理解がつながります。最初から全部を一度に覚える必要はありません。
次に反応式を見かけたら、まず「4個を出すジエンはどれ? 2個を出すジエノフィルはどれ?」と探してみてください。そこが見つかれば、六員環ができる流れも追いやすくなります。











