「ABS」という文字、商品のパッケージや素材説明で見かけたことはありませんか? 車のブレーキの話かな、と思って調べたら全然違う話だった、ということもあるかもしれません。
『ゴイノワ』のナギです。今回はプラスチック素材としての「ABS」、つまりABS樹脂について、意味から使われ方まで順番にほどいていきます。
「なんとなく知っているつもりだったけど、具体的に説明できるかと聞かれるとちょっと詰まる」という方に向けて書きました。
ABSは3つの単語の頭文字
ABS樹脂の「ABS」は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンという3種類の有機化合物の頭文字を並べたものです。英語で書くと Acrylonitrile Butadiene Styrene、読みは「エービーエス」です。
この3つの成分を化学的に結合させて作った合成樹脂のことを、まとめてABS樹脂と呼びます。それぞれが異なる役割を持っていて、組み合わせることで単独では出しにくい性質をいくつも実現しています。
- アクリロニトリル(A)
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耐熱性・耐薬品性・剛性を付与する成分
- ブタジエン(B)
-
耐衝撃性・靭性(粘り強さ)を付与する成分
- スチレン(S)
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成形しやすさ・表面の光沢感を付与する成分
3つの比率を変えることで、衝撃に強いグレード、熱に耐えるグレード、メッキ向けグレードなど、用途に合わせたバリエーションが作られています。
どんな種類のプラスチックなの?
ABS樹脂は「熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)」に分類されます。熱を加えると軟らかくなり、冷えるとまた固まる性質のプラスチックです。同じ仲間にはポリエチレンやポリプロピレンなどがあります。
自然な色は乳白色か薄い肌色で、不透明な素材です。表面がなめらかで光沢が出やすく、塗装やメッキも乗りやすいため、見た目の仕上がりが求められる製品にも向いています。
わたしがここで少し立ち止まったのは、「熱可塑性」という言葉でした。温めると形を変えられるということは、リサイクルのしやすさにもつながるんですよね。ABS樹脂はそういう観点でも工業的に扱いやすい素材です。
身近などこに使われている?
「ABS樹脂が使われているものを思い浮かべてください」と言われても、ピンとこないかもしれません。でも実際は、日常のかなり近いところにあります。
- アクリロニトリル(A):耐熱性・耐薬品性を担当
- ブタジエン(B):耐衝撃性・粘り強さを担当
- スチレン(S):成形しやすさ・表面の光沢を担当
テレビのリモコン、パソコンのキーボード、冷蔵庫の外装パーツ、自動車のインパネ(インストルメントパネル)、そしてあのLEGOブロックもABS樹脂製です。耐衝撃性と加工性のバランスが良いため、形の複雑なパーツにも使いやすい素材なんですよね。
スーツケースのボディに使われることも多く、「ABS製」「PC製」という表記で素材説明されているのを見たことがある人もいるかもしれません。
ポリカーボネートとどう違う?
プラスチック素材を調べていると、ABS樹脂と並んでよく出てくるのが「ポリカーボネート(PC)」です。どちらも耐衝撃性に優れていて、似た用途に使われることがあるため、違いを先に知っておくと迷いにくくなります。
耐熱温度はABS樹脂が70〜100℃程度、ポリカーボネートが120〜130℃程度と、熱への強さには差があります。透明度についても、ポリカーボネートは光を通す透明素材ですが、ABS樹脂は基本的に不透明です。
コストパフォーマンスはABS樹脂のほうが優位で、加工のしやすさや塗装・メッキ適性の高さも特徴です。一方、ポリカーボネートは透明性と耐熱性で上回ります。用途によって使い分けられている関係です。
「ABS」が別の意味で出てくる場面
「ABS」という略語は、素材の話以外でも出てきます。車の安全機能として出てくる「ABS(アンチロック・ブレーキシステム)」は、急ブレーキ時にタイヤがロックするのを防ぐ装置のことで、樹脂の話とはまったく別です。
フィットネスや英語学習の文脈では、「abs」が「abdominal muscles(腹筋)」の略として使われることもあります。「abs を鍛える」という表現で見かけることがあるはずです。
ナギ同じ略語でも文脈でぜんぜん違う話になるんですよね
ABS樹脂の弱点も知っておきたい
長所ばかり並べても実際には使いにくいので、弱点も一緒に見ておきます。ABS樹脂は紫外線に弱く、屋外での長期使用では劣化・変色しやすいとされています。また、有機溶剤(アセトンなど)には溶けやすい性質があります。
燃えやすい点も注意点のひとつです。難燃グレードも存在しますが、標準的なABS樹脂は可燃性の素材です。屋外向けや高温環境での使用が前提の場合は、素材選びの段階で確認が必要になります。
「ABS」という名前の覚え方
ABS樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの3成分が組み合わさった熱可塑性プラスチックで、強度・加工性・外観のバランスが取れた素材です。家電から自動車、玩具に至るまで、幅広い製品に使われています。
「ABS」という略語はブレーキや腹筋の話でも出てきますが、素材の話では「アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン」の頭文字、と押さえておくとぶれません。ポリカーボネートとの違いは、コスト・耐熱温度・透明度の3点で比べると分かりやすいです。
次にスーツケースや家電を買うとき、素材の表記を一度見てみるといいかもしれません。「ABS製」と書いてあったら、今日覚えたこの話が少しだけ顔を出してくるはずです。












