「やけど」という言葉は日常でも使いますが、医療の現場でその広さをどう数値で表すのか、気にしたことはありますか?
「9の法則」は、そのやけど(熱傷)の面積を素早く推定するために使われる計算の考え方です。『ゴイノワ』のナギです。医療系の教科書や看護師の国家試験でも出てくる言葉なので、耳にしたことがある方もいるかもしれません。
この記事では、9の法則の意味と仕組みを、できるだけ身近な言葉でほどいていきます。似た言葉との違いも一緒に触れますね。
「9の法則」ってどういう意味?
9の法則は、成人のからだを11のエリアに分け、それぞれのエリアが体表面積の約9%を占めると考えて、やけどの広さを概算する方法です。英語では「Rule of Nines」とも呼ばれます。
なんで9%なのか、最初に見たときわたしも少し立ち止まりました。でも仕組みを見ると、なるほど、という感覚があります。11か所の9%と、陰部の1%を合わせるとちょうど100%になる、という組み立てになっているんですよね。
主に成人の初期評価で使われる方法で、救急の現場でパッと面積を把握するのに向いています。精密な計算というよりは、迅速に大まかな面積をつかむための目安として広く使われています。
具体的にどこが何%になるの?
各部位の割り当てを見てみましょう。頭部・上肢・下肢・体幹が、それぞれ9の倍数で区切られています。
- 頭部(頸部・顔面・頭部すべて):9%
- 上肢(片側):9%、両側で18%
- 体幹前面:18%(胸部9%+腹部9%)
- 体幹後面:18%(胸背部9%+腰背部・臀部9%)
- 下肢(片側):18%(前面9%+後面9%)
- 外陰部:1%
覚え方としては「頭9、腕9×2、体幹前後18×2、足18×2、残り1」とざっくり頭に入れておくと、組み立てやすくなります。
一つ補足しておくと、顔だけ・後頭部だけのようにエリアを半分で見たい場合は4.5%として扱うこともあります。また、手のひら一枚分が体表面積の約1%にあたるという「手掌法」と組み合わせて、飛び火した小さなやけどをさらに加算することも。
「5の法則」とはどう違う?
似た言葉に「5の法則」というものがあります。こちらは主に乳幼児・小児のやけど評価に使われる方法です。
子どもは大人と比べて頭部が体全体に占める割合が大きく、成人向けの9の法則をそのまま当てはめると誤差が出やすい。だから小児では5の法則を使うほうが実態に近い、ということなんですよね。たとえば乳児の頭部は体表面積の20%と設定されています。成人の9%と比べると、かなり大きな割合です。
つまり、9の法則は成人の評価向け、5の法則は乳幼児や小児の評価向け、という使い分けが基本です。どちらも「素早く概算を出す」という目的は同じですが、対象年齢で使い分ける、というところがポイントになります。
もっと精密な方法もあるの?
「Lund & Browder(ランド・ブロウダー)の法則」という計算法もあります。こちらは体幹をさらに細かく分けて、年齢ごとに割合を変えて算定する方法で、9の法則よりも精度が高いとされています。
ナギ精密に見たいときはLund&Browder、まず全体感をつかむなら9の法則
ただしその分、計算が複雑になるため、救急の初期対応のような迅速さが求められる場面には不向きといわれています。9の法則の良さは、覚えやすくてすぐ使えるシンプルさにある、ということですね。
また、やけどの評価は面積だけでなく「深さ(深度)」もセットで重要になります。面積が広くても浅ければ軽症に近く、深ければ少ない面積でも重症度が上がる、というように組み合わせて判断されることが多いです。
「やけどの広さ」はなぜ数値にする?
やけどの面積を数値で把握する目的の一つは、治療の方針を決めることです。たとえば、成人でⅡ度熱傷が体表面積の30%以上、またはⅢ度熱傷が10%以上になると「重症熱傷」として救急センターでの集中治療が必要になるとされています。
つまり、9の法則で「この人は体表面積の何%がやけどを受けているか」を素早く見積もることで、その後の処置や搬送の判断につながるわけです。感覚ではなく数字で伝えられるから、医療チームで情報を共有しやすい、という意味でも使われています。
9の法則、言葉の芯をつかんでおくと
9の法則は、成人のからだを9%刻みで区切り、やけどの広さをざっくりと数値化するための考え方です。精密さより速さを重視した方法で、救急の初期評価でよく使われます。
似た言葉として5の法則(小児向け)、Lund & Browder法(より精密)、手掌法(小面積の加算用)があり、場面や対象によって使い分けられます。看護師や医療職の試験にも頻出する言葉なので、意味の輪郭だけでもおさえておくと読み取りやすくなります。
もし深く知りたくなったら、「9の法則 各部位 図」で調べると体のどこが何%かが一目でわかる図解が見つかります。言葉で覚えるより、図と一緒に見るほうがずっとつかみやすいので、ぜひ一度確認してみてください。












